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 慶一郎を助けた侍は、ずいぶん物騒な印象の苦笑を浮かべた。
「卑怯者の腰抜けの上に、無礼千万な奴らだ。全員叩っ斬ってやろうか」
「……!」
 ゴロツキ達の表情に、ますますの緊張が走った。
 一瞬にして喧嘩の当事者から傍観者になってしまった慶一郎は、今頃になって全身から噴き出してきた冷や汗に当惑しつつ、この侍がもし刀を抜いたらどうしようと思った。
 ──いくらなんでも殺しちゃ可哀想だし、お侍さんもただじゃすまねえ。
 結果として、そんな慶一郎の心配は杞憂に終わった。
「畜生め! こいつからやっちまえ!」
 破れかぶれになった五人のゴロツキが、懐からドスを抜いて一斉に襲い掛かる。慶一郎なら精々、一人を殴っている隙に他の四人から刺されて死ぬところだが、助太刀の侍には鼻で笑うほどの余裕があった。
 すっと、軽やかな足の運びで侍は入り身して、正面にいたゴロツキの横を取った。そうして他の四人が手出しできないうちに、侍は柔術の技でゴロツキのドスを持つ腕を捻り、くるりと投げ飛ばす。地面で背中を強打し息を切らしているゴロツキの腹部へ、侍は靴底で踏むような止めの蹴りを入れ、確実に気絶させた。
 その後も侍は刀を抜く事すらなく、ひらりひらりとゴロツキ達の攻撃を回避し、顎に掌底を当て、首筋に手刀を打ち込み、さらに二

人を片付けた。
 傍観している慶一郎は、まさに舞台の上で演じられる殺陣を観ている気分だった。助太刀の侍は役者のような優男のくせに、尋常ではない腕前の持ち主だった。
「……ち、畜生! 覚えてやがれ!」
「今に神罰が下るぞ! 覚悟しておけ!」
 実力差を見せつけられたゴロツキは戦意を喪失し、逃走した。

 喧嘩は終わった。
 気絶していたゴロツキの一人を、助太刀の侍が活法で目覚めさせ詰問してみたところ、やはり彼らは霊泉法師の信奉者だった。「久賀組の慶一郎という男が霊泉法師の説法を邪魔して、あちこちで法師の悪口を言い広めている。こんな事を許していいのか」と霊泉法師の高弟に扇動されて立ち上がった『義士』らしい。
「ひでえなあ。お前らが義士なら、オレは吉良かよ」
「自分達だけ武装して大人数で急襲という点は、本物の赤穂浪士と同じだな。まあ、あれはもう戦だから武略というものだが」
 助太刀の侍は慶一郎の軽口に調子を合わせつつ、訊ねてきた。
「それで、此奴らをどうする?」
「……」
本来なら役所に突き出して、正当な処罰を受けさせるべきだろう。
 だが、そうすると当事者の慶一郎と百助はもちろん、できればこの助太刀の侍にも役所に出頭してもらって、みんなで役人の吟味を

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